ものづくり
No. 5
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毎日食べるものだからこだわる安心

島のお母さん「みそっ子」

mugi午前8時半。廃校となってしまった小学校の校舎ににぎやかな声が響き渡ります。小値賀本島と橋で結ばれる斑島。平成19年に閉校した斑島小学校の給食室と家庭科室を工場に、島のお母さんたちが味噌をつくっています。
味噌づくりグループ「みそっ子」は、「地域主体で島の特産品をつくることはできないか」という声がきっかけで発足しました。今から10年前のことです。特産品といっても、島の人たちが認めて日常的に活用しなければ特産品とは言えません。“安心して毎日食べられるもの”。味噌づくりはそんな想いから始まりました。
小値賀で昔から伝わる味噌づくりを島のおばあさんに教えてもらい「みそっ子」として8人でスタートを切りました。それぞれ家庭や仕事を抱える島のお母さんたちです。忙しい中での活動にメンバーも今では5人になりました。「忙しかってえ。でも、楽しいからできる。楽しくないと続かんとよ。」だから、工場の中はいつもにぎやか。
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そんなお母さんたちがつくる味噌は、100%小値賀産。大豆は島の企業に栽培してもらい、小麦は地元農家さんから買っています。極めつけは、塩も小値賀産。メンバーで大豆を栽培したこともあるそうです。
「自分たちで大豆を育てたときは、もう、一粒ひと粒がダイヤモンドみたいに思えたもんたい。」

生きている麹
kozi01100%小値賀産の味噌づくりは麦を蒸すことに始まって3日間かかります。給食室には大きな窯が二つ。それぞれの釜にお手製の木枠をはめ、三つずつ鍋をかけて麦を蒸します。芯がとれてもっちりとなった頃に釜からあげて麹の準備をします。広げた麦に何度もなんども手を鋤き入れて、ひと肌ぐらいの温かさになるまで冷まします。麹づくりに使い続けているのは、なんと昭和30年に作られた木のもろぶた。箱の中には菌が生き続けているそうです。もろぶたを重ね密閉したうえで2日間寝かせて発酵させます。季節や気温によって発酵具合が異なってくるので毎回真剣勝負。お母さんたちは気が気でない様子です。
「昔は『麹焼け』っていって、べちゃべちゃっとした麹によくなったもんたい。10年つくり続けてるけど、今でも勘。」

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本当の手づくり
3日目。真っ白な麹の花が咲き、うっすらと湯気が立つころには校舎に甘い香りが漂います。麹づくりと並行して2日間かけて煮詰めた大豆、麦、塩を混ぜ、練り合わせるとようやく見慣れた味噌のかたちに。たるに入れ、日の当たらないひんやりとした場所で5ヶ月もの間熟成させます。「3ヶ月は麹くさい、5ヶ月が一番いい状態」といわれる味噌は、熟成されて滋味あふれる完全に手づくりの味。
「『手づくり』と言われるものの中でも、本当に手づくりのものは少ないとよ。何かしら機械が入ってるったいね。私たちの味噌は本当の手づくり。自分たちで作りだしたら、市販の味噌が食べられなくなったほど。」
肝っ玉母ちゃんたちの集まりだけれど、味噌づくりに対しては職人そのもの。そこには毎日食べるものへの安全安心に対するこだわりとお母さんらしい島へのあたたかな眼差しがありました。
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