ものづくり
No. 3
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こだわってこだわって

生きたアジでつくる
IMG_0267s真っ白なお家の前に「民泊モモ・しいちゃんカマボコ」と描かれた看板。ここは小値賀に数件残るかまぼこ屋さんの一つ、「しいちゃんかまぼこ」のお家です。
しいちゃんこと松永静江さんは、お父さんの光則さんと民泊民家をしながらかまぼこをつくっています。「小値賀のかまぼこはアジ100%じゃないとかまぼことは呼ばせない」。これはどうやら島で共通の戒めのようです。だから、しいちゃんかまぼこも天然アジ100%でつくっています。
     
IMG_0223sかまぼこづくりは、まず魚をさばくことから始まります。そのさばき方というのが、なんと包丁を使わないですべて手で行うから驚き。頭と内臓、中骨を次からつぎへと手で素早く取り出していきます。冷凍せずに水揚げされたばかりを素早く処理するから、まだ生きているアジの身は引き締まっていて、そのままお刺身で食べてしまいたいぐらい美味しそう。そぎ落とした身は機械でミンチにしてタネの出来上がりです。これを一度の作業でしてしまうのですから、かまぼこづくりの日は朝と夜が逆転してしまうそうです。それにしても、しいちゃんが社長で元漁師のお父さんが平社員の関係は、どうみても夫婦漫才。しいちゃんが「なんばしよっと!」とお父さんを叱りながら夜なよな作業は進んでいきます。

「おいしい!」と思ってもらいたい
IMG_0262s出来上がったタネは練ってねって練り込んでいき、手でペンペンと形を整えるとそのままスボの上をコロコロッと転がします。
冷凍したアジは使わないので魚が揚がらなければつくれません。不安定であってもそこまでこだわったかまぼこを作るのは「なぜ?」と聞いてみると、それは島の「戒め」のせい。ではなく純粋に、食べた人に「おいしい!」と思ってもらいたいから。そしてもう一つは、代々続いてきたおばあちゃんの作り方が一番美味しいと思うし、継いでいきたいからだそうです。「本当はね、真空パックなんてせんで茹でてそんまんまのかまぼこを食べてほしかったい。昔はかまぼこを作ったらそんまんま売りよったからね。そいでもすぐ売れとったとよ」。そう語るしいちゃんは、まさにかまぼこ職人でした。
IMG_0287sふんわりもっちり茹で上がった熱々のかまぼこは、一生忘れられない美味しさ。かまぼこをふうふうしながら食べる機会はなかなかありませんが、まるで魚のダシをそのまま食べているような深い味わいです。冷ますと、ふんわりの代わりに弾力が増して、かまぼこが「魚だ!」と主張しているような旨みが出ます。「おいしかろー、おいしかろー」と二人に言われながら食べていると、なんだか笑いが止まらなくなってきました。しいちゃんかまぼこの美味しさは、素材そのものだけではなくて、しいちゃんとお父さん二人の魅力が美味しさを増しているんだなとしみじみ感じてしまいます。